エチオピアには「Zefen(ザファン)」という言葉があります。「Music (音楽)」と訳されることが多いですが、音楽・歌・ダンス・祭の全てがつまった言葉が本来の「Zefen(ザファン)」の意味なのだそうです。第5章では、エチオピアの日常に欠かせない「Zefen」の要素を集めてみました。

1.マシンコ(エチオピアの一弦ヴァイオリン)

2.クラール(ダビデの竪琴の原型)

3.カバロ(タイコ)

4.ワシント(竹笛)

5.アズマリ

エチオピア北部ゴンダール地方には、マシンコ(一弦ヴァイオリン)を奏で歌うことを業とする楽師の集団(アズマリ)が暮らしています。アズマリ・ベット(アズマリの家)と呼ばれる酒場では、お酒をいただきながら彼らの演奏、歌、ダンスを楽しむことができます。伝統的な音楽を奏でることもあれば、客席を回り、即興で歌い、客を持ち上げたり、世相を反映した風刺を歌にすることもあります。私が訪ねたアズマリベットのオーナーは「アズマリは学校に通わなくても新聞を隅から隅まで読み、世の中のことをよく知っていなければ務まらない」と言いました。人気のアズマリほど、頭の回転が早く、世の中の光と影を知っていて、それを面白おかしく歌に仕立てることができるのです。彼らのプロ根性には頭が下がります。